Description / 説明

「ASMRドラッグ」は、繰り返し聴くたび、あなたを極限まで追い込む

朝のニュースで、またその名前を聞いた。
画面には、モザイクのかかった繁華街の映像が流れていた。
クラブの個室、ラブホテル街の路地裏、廃れた匿名掲示板、ジャンキーな性欲バカが集まるサイト。
削除されても、それはすぐに別の場所で売られるという。
アナウンサーは、淡々と読み上げる。
「現在、若者を中心に、音を摂取するという表現で広まっている違法性不明の"ASMRドラッグ"と呼ばれる音源が問題となっています」
次に流れたのは、ASMRドラッグを摂取したという男のインタビューだった。
顔から下が画面に収まり、声は極太に加工されている。
ゆったりとパイプ椅子に座って、その足は大きく開かれていた。
「脳は皮膚なのかなって、思ったんです」
男はうっすらと笑っていた。
「鳥肌が立つって、今まで寒いときだけ立つって思ってたんですけど……でもあれは……耳から入った音が、後頭部を通って、背筋に落ちてくる。逃げたいのに、もう一回ほしくなる」
スタジオに戻ると、専門家の男が眉をひそめていた。
「……人間の危機的本能、接近音への警戒、低音による身体反応、そして性的興奮に近い報酬系の反応を組み合わせた、非常に依存性の高い音響刺激、と考えられます」
眉間のシワは、もとから、こうなんだろう。
だけどまさか、男の危機的本能が、中毒性のある快感に変わる。
音で、そんなことが起きるわけないだろう。
女と付き合った経験がなくても、音に強い者として、そう思った。

昼、街を歩いていた。
知らない街の、知らないやりとり。途中、恰幅ある男二人がぶつかる火種を見た。
ケガの手当はごめんだと、夜の匂いがする細い道に逃げ込む。
ここまでに視界に入っていたカラスの体型からもわかる通り、かなり治安が良くない街だ。
休日、散歩をする理由は、自分の生活にないものを拾うのが好きだから、なのだけれど、
工事中の囲いにそぐわない、やけにデカい二次元バーコードが貼り付けられているのを見つけて、
散歩をやめられない理由がまた、できてしまった。
コードの下に書かれた[TRIGGER]の文字は、店名なのだろうか。
工事中の建物は、「賃貸探すなら、エxxx」と書かれた店舗だ。
ためらう方向を向きながら、スマホを取り出した。
みっともない表情が顔に出ていたのか、他人が離れていく気がした。
待ってくれ、待って……。
人の目を強く気にしながら、恐る恐るコードを読み取る。
一体、何が出るんだろう。
読み込まれたURLを開くとこの一文が構えていて、ハッと息を呑んだ。
「"本番"の前に使え。誰にも見つからないようにしろ」

取り繕って冷笑する側にいるが、
この音を聴いたあとにした"本番"は、
スリルがわかるヤツほどエグくイッてしまう。
ああ、もっと気持ちよくなれるASMRドラッグが、街にあるかもしれない。
音色に染まったゾンビは、よく晴れた日に、散歩をしている。

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